Packing List for Camino

基本的な前提として、パスポートや現金・クレジットカード、スマホなどの必需品を除けば何を持っていくのかは個々人の自由であり、制約は何もない。

しかしスーツケース携行を想定するわけではなく持ち物を全てザック(バックパック)に詰めて背負い何百kmも歩む旅となるので、軽量化の優先度は非常に高い。軽量化は早く目的地に辿り着く為の手段ではなく、楽しく快適に歩き続ける為の方法論である。

まず、ザックの重量においてベースウェイトとパックウェイトの2つの概念を抑えておく必要がある。

ベースウェイト  水や食料、消耗品を除いたザックの重量
パックウェイト  実際に背負うザックの総重量(水・食料などを含むザックに収納された全ての荷物)※着用中の装備品は除外する

水や食料の量は日々変動するため、まずはベースウェイトを意識し軽くすることが重要となる。
一般論として漠然と”8〜10kg”や”体重の1/10の重さ”などという指標も存在するが、ここではベースウェイト5kg以下を推奨する。

※体重1/10基準の問題点
例えば体重50kgの方であれば5kgはちょうど良いが、80kgの方が8kg背負うのは必ずしも適切ではなく、体重が重くなるほど関節や足腰への負担が大きいので相対的に装備を軽くして疲労軽減を図るべき事実を考慮する必要がある。

装備の軽量化の意義として、

・疲労軽減、ペース維持
・怪我の予防
・荷物整理の効率化
・思考のシンプル化
・自然との一体感の向上

などが挙げられ、長距離・長期間歩く巡礼では「軽さ=体力・心の余白」として考える。余白がなければ楽しむことすらままならなくなってしまい本末転倒になり得る。

基本的に「街から街」の移動なので、必要に応じて現地でその都度調達できる環境にある。
街でなくても巡礼路や村にバル・マーケット・薬局は点在しており、所在地のデータベースもある程度充実している。

“ザックの過剰な重さ = 不安の大きさ” であり、「一応、持っていく」から「迷ったら、持たない」へと思考を転換することが大切。

以下のパッキングリストはあくまで一例なので、自分なりの軽量化を念頭に置きつつ取捨選択が必要となる。
※何が消耗品にあたるのかの判定基準は曖昧なのであくまでも目安。


 貴重品

▶︎ パスポート | 最重要。紛失 = 巡礼の終了に繋がりかねないのでしっかりと管理する。
▶︎ 巡礼手帳  | ザックを下ろすことなく取り出せるようサコッシュやザックのハーネスにサブバッグを取り付け収納すると便利。

▶︎ 現金  | クレジットカード対応していないアルベルゲやバルもあるので100〜200ユーロ程度所持しておく。
▶︎ クレジットカード  | 紛失に備えて2枚所持し、保管場所をそれぞれ分けてリスク分散させる。
▶︎ チケット関係  | PDFでスマホ内に所持し、クラウドにもあげておくといざというときも対応できる。それでも不安であれば印刷する。


 バックパック関係

▶︎ バックパック | 30L程度が最もバランスが良く、さらに軽量化を目指すのであれば20L前後でも季節によっては十分対応できる。重さは500〜1000gが目安。
▶︎ レインカバー  | ザックの大きさに適したサイズを選ぶ。ザック底部ポケットに収納するのがセオリー。


 衣類

▶︎ ベースレイヤー(Tシャツ)| 毎日洗濯するので、基本的に1枚で良い。化繊 x メリノウールの混紡など、速乾性の高いものを選ぶ。季節に応じて長袖に。
▶︎ 下着 | ベースレイヤーと同様。
▶︎
レインジャケット | 防水性と透湿性を兼ね備えたゴアテックスなどを選定する。耐水圧20000mm以上のスペックが望ましい。
▶︎ 
レインパンツ | レインジャケットと同様。
▶︎ 
防寒着 | 季節に応じてフリース・ダウン・化繊などから選定する。
▶︎ 
靴下 | クッション性を担保するためにやや厚手のものを選ぶ。代償として乾きにくいので予備は2セットあってもよい。
▶︎ 手拭い | タオルよりも軽量性・速乾性・汎用性に優れた手拭いがおすすめ。2枚あって良い。


寝具

▶︎ シュラフ(寝袋 ) | 予想最低気温に応じてスペック(対応温度)を検討する。ハーフレングスシュラフ(下半身のみ)も軽量化に貢献できる(上半身は防寒着で補完する)。暖かい時期であればインナーシュラフやダウンブランケットのみでも可能。アルベルゲを利用しないのであればそもそも不要。
▶︎ 耳栓  | アルベルゲを利用する場合は必須。
▶︎ 枕カバー | 枕本体はアルベルゲにある。タオルや手拭いなどでも代用可能なので必須ではない。


 電子機器

▶︎ スマートフォン | 落下による破損・故障に備えてケースやフィルムはあったほうが賢明。
▶︎ 充電ケーブル | ケーブル長を短くすれば軽量化に貢献できるが利便性とトレードオフ。USB-C規格に全ての機器端子を揃えれば1本で済む。
▶︎ 充電器 | モバイルバッテリーの機能も兼ね備えたものが良い(例えばANKER 521 POWER BANK)
▶︎ 変換プラグ | Cタイプに変換しないと使用できないので必須。無印の変換プラグが軽量(19g)
▶︎ ヘッドライト | 日の出前から歩き始める場合は必須。200ルーメン以上のスペック推奨。
▶︎ サブライト |  早朝アルベルゲ内で荷造りをする際、またヘッドライトの予備としてあったほうがベター。Rovy Vonがおすすめ(21g)
▶︎ カメラ | 99%の巡礼者は携帯しない。スマホのカメラ以上の写真を求めるのであれば重さを許容し携行
しても後悔することはない。1つの最適解としてRICHO GR (APS-C)がある(約250g)。もしくは各メーカーの最軽量モデルを選定する(例えばNIKONであればZ30 + 16-50mmあたり)


洗濯

▶︎ 洗濯つけおき袋 | 毎日洗濯する必要があり、アルベルゲによって洗濯事情も様々なので自身の洗濯ルーティンを考えることが合理的。”どこでも袋でお洗濯” が場所問わず洗えるのでおすすめ。
▶︎ 洗剤 | 1回使用分が小分けになっている商品が便利(ワンパックアタックZEROなど)
▶︎ 洗濯紐 | 宿泊場所によって吊るせたり吊るせなかったりするので1本あるべき。SEA TO SUMMIT CLOTHESLINE(25g)であれば洗濯バサミも不要になるのでおすすめ。


● ファーストエイド

▶︎ 薬一式 | ファーストエイド関連はできる限り充実させたほうが良い。現地でも薬局は必ずあるが、普段慣れ親しんでいるものを持参し、それでも足らなければ現地で調達する。
▶︎ 絆創膏 | 小型と大型の2種類あるとよい。多めでOK。
▶︎ 水脹れ用パッチ | 水脹れは必ずできるものとして考える。キズパワーパッド靴擦れ用を歩行日数 x 1〜2枚分ほど用意する。現地でもCOMPEEDという水膨れに最適なパッチを入手できるがやや高額。
▶︎ 消炎鎮痛剤 | 筋肉痛による痛みや腫れ、捻挫した場合にも1本あったほうがよい。基本的にローションタイプ、場合によってはタブレット(飲み薬)と併用する。
▶︎ ワセリン | 足裏の摩擦軽減に使用する。また肌や唇の保湿にも活用でき汎用性が高い。


 パーソナルケア

▶︎ 虫除けスプレー・痒み止め | 蚊やダニ対策として携行するべき。
▶︎ 日焼け止め | スペインの陽射しはとても強いので毎日必ず塗布する。日焼けで発熱し行動不能に陥らないように。
▶︎ 歯磨きセット | トラベル用の小型。
▶︎ バスセット | 石鹸やシャンプー。小型のものを持参し、足りなくなれば現地調達する。
▶︎ 爪切り | 長期間の巡礼において爪は必ず伸びるので必須。VICTORINOXのネイルクリッパーはわずか12g。


 その他

▶︎ 折り畳み傘 | 雨具と併用すればより雨から身を守ることができ、日傘としての役割も担える。Knirpsの最軽量は125g。
▶︎ サンダル | 必須ではない。宿に到着後、脚をトレッキングシューズから解放できるがある程度重さがあるので要検討。
▶︎ サブバッグ | 街歩きの際に貴重品を入れる役割を果たす。歩行中もフロントバッグとして大きく活躍する。
▶︎ スタッフサック | 小物をまとめパッキング効率を上げる。ジップロックとの併用がよい。


↑ ここまでがベースウェイト(5kg以下を目指す)


 水・食料

▶︎ | 季節に応じて必要量が可変する。最低でも1L、真夏は2L以上を目安とする。
▶︎ 行動食 | 重量が嵩むので適量を持っていく。携行しやすくタンパク質を手軽に摂取できるプロテインバーがおすすめ。
▶︎ 栄養補助 | どうしても栄養が偏りがちになるのでお好みでチョイス。筋肉疲労回復を促すアミノ酸やマルチビタミンなど。


 消耗品

▶︎ ポケットティッシュ | 日程の長さに応じて数を調整する
▶︎ ウェットティッシュ | やや重さがあるのでポケットティッシュのみに省略可。


↑ ここまでがパックウェイト(ベースウェイト + 水・食料・消耗品)

※ラゲッジスケール(ザックを吊るして重さを測るはかり)で測定するとよい。

装備品(ザック内ではなく歩行中装備)

▶︎ ベースレイヤー(Tシャツ) | 予備の1枚と同じもの、もしくは同様の機能を備えたもの(速乾性・抗菌性)
▶︎ 下着 | ベースレイヤーと同様。
▶︎ トレッキングパンツ(またはショーツ)| 季節に応じてロングパンツかショーツか選択する。
▶︎ ウインドシェル | 肌寒い早朝や風から身を守る、活動中も着用し続けられる軽量タイプ。例えばPatagonia Houdini JKTなど(100g前後)
▶︎ コンプレッションタイツ | 筋肉のブレを抑制し疲労軽減へつなげる。キネシオテープ(筋肉・関節の動きをサポートする伸縮性テープ)で代用するとさらに軽量化へ貢献できる。
▶︎ 帽子 | 直射日光を遮るためにハットもしくはキャップ。首周りも保護できるとなお良い。
▶︎ サングラス | 紫外線から目を守るために必要。紛失防止でストラップをつけるのも賢明。
▶︎ トレッキングポール | 脚に集中する荷重をトレッキングポールを使うことによって20〜30%負荷が軽減する。2足歩行から4足歩行になるイメージ。持参しなければ森でちょうど良い木の枝を見つけて代用する。
▶︎ グローブ | 早朝や風の強い日から手・指先を守る。スマホ操作を念頭においたタッチパネル対応、またはハーフグローブなど。グリップ力があるとトレッキングポールとの親和性が高くなる。
▶︎ 靴下 | 予備のものと同じものがベスト。異なるものを選ぶと歩行や脚の調子が変わってしまいストレスとなる。
▶︎ | 堅牢性・クッション性・安定性・防水性のバランスに優れたものがよい。事前に半年ほど履き慣らす必要がある。ローカット、ミドルカットはお好みで(ローカットは必ず靴内に小石や落ち葉が入り込むことを留意する)


表計算ソフトの活用

Excel / Numbers / Googleスプレッドシートなどの表計算ソフトで自分だけのパッキングリストを作成する。

装備は1g単位で計測し、分類別に計算ソフトで管理する。
感覚ではなく数値的に把握するプロセス自体が軽量化への第一歩となる。


軽量化を学ぶ

軽量化に関する基本書を1〜2冊読んで学ぶと思考が深まる。
登山をしなくても、軽量化登山やULハイクの技術はカミーノに応用可能な考え方が多く、知識として保有しておくと判断基準が明確になる。
※グランマ・ゲイトウッドはどちらかというと実録哲学書。

ウルトラライトハイキング Hike light, Go simple. 土屋智哉

軽量登山入門  栗山祐哉

グランマ・ゲイトウッドのロングトレイル


データベース

各道のデータベースは書籍が最も充実しているが基本的に英語版。Kindleで所持すれば0g。
日本語展開されているものは概ね巡礼録よりの質感なので注意すべき。
スマホアプリ Buen Camino de Santiago App と併用すると良い。

A Pilgrim’s Guide to the Camino de Santiago (Camino Francés)

Camino Portugués: Lisbon – Porto – Santiago,
Central and Coastal Routes (Village to Village Map Guide)

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